レイテンシとは、ある操作を行ってから、その応答が返ってくるまでに生じる時間の遅れのことです。ネットワーク分野では、データがある地点から別の地点まで移動するのにかかる時間を指し、通常はミリ秒(ms)で測定されます。
レイテンシが低いほど通信の応答は速くなり、高いほどWebサイトやオンラインゲーム、業務アプリケーションの反応が遅く感じられるようになります。
たとえば、ユーザーがリンクをクリックすると、リクエストがサーバーに送信され、サーバーからレスポンスが返されます。このときの所要時間には、ネットワークレイテンシに加え、サーバーでの処理時間なども含まれます。
レイテンシはどのように測定する?
ネットワークレイテンシの測定には、一般的にラウンドトリップタイム(RTT)が用いられます。RTTは、信号が送信元から宛先に到達し、再び送信元に戻ってくるまでの時間を表します。
代表的なネットワーク診断ツールは、次の2つです。
- Ping: ICMPメッセージを使用してRTTを測定します。Pingの結果が20 msの場合、往復に約20ミリ秒かかったことを意味し、片道の遅延が20ミリ秒という意味ではありません。
- Traceroute: 送信元から宛先までの通信経路と経由するネットワーク機器を確認し、ルーティング経路や遅延の原因を調査するために使用します。ただし、各ホップで表示される応答時間が、実際の通信トラフィックのレイテンシを正確に反映するとは限りません。
アプリケーションのパフォーマンスを評価する場合は、処理時間も含めて把握できるレスポンスタイム指標が役立ちます。技術チームでは、P95やP99といったパーセンタイル指標もよく使用されます。P95は測定対象のリクエストの95%が完了するまでの時間、P99は99%が完了するまでの時間を示します。これらの指標を使うことで、平均値だけでは見えにくい応答の遅いリクエストを把握できます。
ネットワークレイテンシが高くなる原因
ネットワークレイテンシの上昇には、さまざまな要因が関係します。データの伝送速度だけでなく、システムがリクエストを処理する効率も影響します。
- 物理的な距離: データの伝送距離が長いほど、宛先に到達するまでの時間も長くなります。
- ネットワークの混雑: トラフィックが集中すると、パケットがキューで待機する時間が増え、レイテンシが上昇します。
- ルーティングの非効率性: 最適でない通信経路を通ることで、余分な伝送時間が発生します。
- 処理遅延: ルーター、ファイアウォール、サーバーがデータを検査・処理する際にも時間がかかります。
- 伝送媒体: 無線通信の干渉やパケットの再送によって、追加の遅延が発生する場合があります。
- プロトコルのオーバーヘッド: コネクションの確立、暗号化のハンドシェイク、繰り返し発生する通信のやり取りなどが、リクエストの所要時間を増加させます。
レイテンシ・帯域幅・スループットの違い
レイテンシ、帯域幅、スループットは互いに関連していますが、それぞれネットワークパフォーマンスの異なる側面を表す指標です。
| 指標 | 定義 | 主な単位 | わかること |
|---|---|---|---|
| レイテンシ | データの伝送やリクエストへの応答にかかる時間 | ミリ秒(ms) | 通信や応答の速さ |
| 帯域幅 | 理論上の最大データ転送容量 | Mbps / Gbps | 回線が処理できるデータ量 |
| スループット | 単位時間あたりに実際に転送できたデータ量 | Mbps / Gbps | 実際に転送されたデータ量 |
レイテンシが重要な理由
レイテンシは、Webサイトやアプリケーションの操作性、オンラインサービスの処理効率など、デジタルサービス全体のパフォーマンスに大きく影響します。レイテンシが高いと、ユーザー体験やビジネス成果、アプリケーション全体のパフォーマンスが低下する可能性があります。
ユーザー体験の低下
レイテンシが低いと、Webサイトの応答が速くなり、ビデオ通話がスムーズになり、オンラインゲームでも快適に操作できます。一方、レイテンシが高いと、ページの表示、リクエストの送信、アプリケーションの操作などに遅延が生じることがあります。
特に、ビデオ会議やオンラインゲームなどのリアルタイム性が求められる用途では、わずかな遅延や中断でもユーザー体験に影響します。複数の地域にユーザーを抱える企業にとって、レイテンシの低減は、デジタルサービスの応答性を高め、地域を問わず安定した利用体験を提供するうえで重要です。
コンバージョン率と売上の低下
レスポンスが遅いと、ユーザーの操作が中断されたり、取引に時間がかかったりして、購入を途中で断念する可能性が高まります。ECサイトでは、商品閲覧、購入手続き、決済処理などで遅延が発生すると、購買プロセスが妨げられ、購入完了に至らないことがあります。
フォームの入力、予約、各種リクエストの送信などを必要とするオンラインサービスでも、同様の問題が発生する可能性があります。レイテンシを低減することで、こうした操作上の障壁を減らし、よりスムーズなユーザー体験を実現することで、エンゲージメントやコンバージョン率の向上につなげられます。
エンドツーエンドのレスポンスタイムの増加
現代のアプリケーションでは、1つのリクエストが複数のサービス、API、データベースと連携することがあります。それぞれの通信でネットワーク遅延や処理時間が発生し、複数の処理を順番に実行する場合には、それらが積み重なっていきます。
そのため、個々のサービスで発生するわずかな遅延でも、ユーザーが実際に体感する応答時間を大幅に延ばす可能性があります。高いレイテンシは、特定のコンポーネントだけでなく、アプリケーション全体の応答性にも影響します。安定したパフォーマンスを維持するには、サービス間の効率的な通信が重要です。
レイテンシを低減する方法
- コンテンツ配信ネットワーク(CDN)を活用する: CDNは、エンドユーザーに近いサーバーにコンテンツをキャッシュすることで、データの伝送距離を短縮し、レイテンシの低減に役立ちます。
- ネットワークルーティングを最適化する: 効率的な通信経路と安定した接続を確保し、不要な遅延を最小限に抑えます。
- 接続に伴うオーバーヘッドを削減する: リダイレクトや不要なリクエストを減らし、既存の接続を再利用することで、接続確立にかかる時間を抑えます。
- アプリケーションの処理を最適化する: データベースクエリを改善し、不要なサービス間の依存関係を減らすことで、応答速度を高めます。
- レイテンシを継続的に監視する: Ping、Traceroute、P95やP99などのアプリケーションレスポンスタイム指標を活用し、パフォーマンスのボトルネックを特定します。
複数の地域のユーザーにサービスを提供する企業にとって、CDNインフラの配置場所や現地のネットワーク接続品質は、コンテンツ配信のパフォーマンスを左右する重要な要素です。
CDNetworksは、90以上の国と地域に3,000か所以上のPoP(拠点)を展開しています。CDNetworksのCDNサービスは、ユーザーに近いエッジサーバーからキャッシュコンテンツを配信することで、長距離のデータ転送を減らし、レイテンシの低減を支援します。
さらに、東南アジア、ラテンアメリカ、アフリカ、中東などの新興市場でもネットワーク拠点の展開や現地ISPとの連携を進め、ネットワーク環境が複雑な地域におけるコンテンツ配信の改善を支援しています。
よくある質問
レイテンシは高いほうがよい? それとも低いほうがよい?
レイテンシは低いほうが優れています。システム間のデータ転送やリクエストへの応答にかかる時間が短くなるためです。レイテンシが高いと操作への応答が遅くなり、リアルタイムアプリケーション、オンラインゲーム、ビデオ通話、ビジネス上の取引などに悪影響を及ぼす可能性があります。
レイテンシはどのくらいが適切?
適切なレイテンシは、アプリケーションの用途やネットワーク経路によって異なります。多くのインタラクティブな用途では20 ms未満であれば非常に良好で、一般的なオンラインサービスでは100 ms未満が許容範囲となる場合があります。企業向けアプリケーションでは、エンドツーエンドのレスポンスタイムに加え、P95やP99の目標値も評価することが重要です。
レイテンシをゼロにすることはできる?
レイテンシを完全にゼロにすることはできません。データが物理的な伝送媒体を通過するには時間がかかり、システムがリクエストを処理する時間も必要だからです。ローカルネットワークであっても、伝送、伝搬、処理の各段階で一定の遅延が発生します。
レイテンシとPingは同じもの?
レイテンシは、データの伝送やシステムの応答に伴う時間の遅れを指します。一方、Pingはネットワーク診断ツールであり、一般的にはネットワークの往復時間(RTT)を測定します。Pingの結果はネットワークレイテンシを把握するうえで役立ちますが、アプリケーション全体のレスポンスタイムを測定するものではありません。
インターネット回線が速いのにレイテンシが高いのはなぜ?
インターネットの帯域幅が大きくても、ネットワークの混雑、サーバーまでの距離、非効率なルーティング、Wi-Fiの電波干渉、アプリケーションの処理速度などが原因で、レイテンシが高くなることがあります。
帯域幅は回線が転送できるデータ量を示すのに対し、レイテンシは通信にかかる時間の遅れを示します。そのため、帯域幅が大きくてもレイテンシが低いとは限りません。